たまには明るい話を ─五月病の予防薬─
蛙鳴蝉噪、野次が飛ぶ、足踏みをする卓を拳固でぶっ叩く、挙句の果てには互いに胸倉掴み合い、柔道の技を競い合う。 「これが仮にも文明国の議会かね」 とは、大日本帝国の衆議院を見学した人々の、一様に浮かべる嘲笑だった。 多少なりとも表現力に自信のある文士らは、衆愚院だの日比谷座だの何だのと、議会を揶揄し諷するための新たな言葉の発明に余念のない有り様だ。 ところがしかし何処にでも変わり種は居ると見え、 「あれはあれで進歩の一過程なのだ。そう辛辣に、批判ばかりするもんじゃない。──たとえ牛歩の歩みでも、日本の政治は確実に、洗練されて行っている」 と、苦しい擁護に敢えて乗り出す者も居た。 富士川游が、まさ…
2025/04/09 17:11