『浴室』/ジャン=フィリップ・トゥーサン
『浴室』の物語は、ある日突然、主人公の青年が浴室に引きこもってしまう、というところからはじまる。なるほど、胎内回帰願望のメタファーとしての浴室、とかそういう感じなのかな、などとおもって読み進めていくと、数ページ後には彼はあっさりと浴室を出て、引きこもり生活をやめてしまう。同居している恋人とか、家にやってくるポーランド人たちともふつうに――それなりにふつうに――コミュニケーションをとっていたりする。やがて、主人公はこれまた突然イタリアに旅発ち、現地で医師の夫婦と仲良くなったりもするが、結局また家に帰る。…こんな風に書いてもぜんぜん意味がわからないのだけれど、でもじっさいそういう展開の小説なのだ。