短篇小説「ジダハラ」
世間では時短ハラスメント、略して「ジタハラ」というものが流行っているようだが、わたしの職場では「ジダハラ」にすっかり迷惑している。 ジダハラの原因は、わたしと同じ職場で働く壇田踏彦という男である。踏彦はことあるごとに地団駄を踏む。その足音が、周囲をジリジリと苛つかせるのである。すでにおわかりだとは思うが、ジダハラとは「地団駄ハラスメント」の略である。 厄介なのは、われわれ地団駄を踏み慣れていない人間にとって、いまだ地団駄という行為が未知の領域であるということだ。地団駄とは本来、怒りや悔しさから踏むものと思われている。だが踏彦の様子を観察した結果、わたしを含む周囲の同僚らの見解では、それは地団駄…