『フリー <無料>からお金を生みだす新戦略』/クリス・アンダーソン
『WIRED』誌の編集長だったクリス・アンダーソンによる2009年の著作。10年も前の本だけれど、書かれている内容はいまなお進行中のものばかり。アンダーソンの洞察力はすごいな、と感じ入った。 アンダーソンは、20世紀のマーケティング手法にも「フリー」(=費用からの自由)を利用するものはあったけれど――安全剃刀をタダで配って、替刃を販売して利益を得る、無料でレシピ本を配布して食品の売り上げを伸ばす、など――デジタル技術を利用した21世紀の「フリー」は、「将来のためのエサではなく、本当にタダ」である点が重要なのだと語る。アナログで試供品を作ったり配布したりするのにはいちいちコストがかかっていたけれど、デジタルの世界においては、情報処理や通信にかかるコストが、ひいてはオンラインサービスに必要となるコストが、激しい競争を通じて限りになくゼロに近づいていくことになる。おまけに、デジタルであれば全世界のユーザに対して一度に「フリー」のサービスを提供することだってできる。