君は朝日の寝息を聞いたことはあるか。(終章)
※ 「君は朝日の寝息を聞いたことはあるか、沈黙の月(三章)」の続きになります。 僕たちはお互いの背後からゆっくりと顔を覗かせる朝日を見ていた、海面は穏やかで、風はほとんど吹いていない。広すぎる海のどこかに、僕たち二人ぽつんと漂っている。すると僕の左手に握られた翼の欠片が、ふわっと吹かれて、彼女の心の中に吸い込まれて行った。同じくして、彼女もなにか思い出したように赤いヒトデを海に浮かべた。そのヒトデは僕の方へ泳いで来ると、差し出した僕の手の平に乗る。互いの心の欠片が戻ったのである、そして朝日に照らされた僕たちは、互いの姿が見えなくなる。陽光が眩しすぎる、僕は思わず溶けて行く彼女に手を伸ばす。 ◇…