第3話:野口英世編〈Part2〉『栄光と誤解とウイスキーと』―天才が歩いた不器用な一本道
「野口先生は、また研究室に泊まり込んでおられるよ」 そう呟く助手の声に、館内の誰もが驚かなくなって久しい。あの男のことだ、何をするにも極端なのである。寝ることも、食べることも、金を借りることも。 それが、野口英世という男であった。 英世はその生涯、他人の思惑に左右されることがなかった。だが、彼の人生を傍から眺めれば、まことに**「誤解の宝庫」**のような道である。 黄熱病の研究で知られ、ノーベル賞候補にも名を連ねた彼であるが、実のところ、その研究には多くの誤診と失敗があった。最終的に彼が命を落とすアフリカでの研究でも、英世は黄熱病のウイルスが血液中にあると信じ込み、その見解を覆されてもなお、己…
2025/07/17 12:17