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諧謔小説・笑える面白い本

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諧謔小説・笑える面白い本
テーマ名
諧謔小説・笑える面白い本
テーマの詳細
エスプリの利いた面白い笑える小説や本、エッセイなどについてのテーマです。腹を抱えて笑える本を待っています。
テーマ投稿数
164件
参加メンバー
16人

諧謔小説・笑える面白い本の記事

1件〜50件

  • #異世界ファンタジー
  • #懸賞情報
  • 2022/09/02 08:11
    ♨️大正浪漫 日本の思い出銭湯とマッカーサー

    🌟銭湯で出会った人々🌟・マッカーサー・パンティーストッキング男🎎🎎🎎🎎🎎🎎基本情報🏮🏮🏮🏮🏮🏮名称:はすぬま温泉種別:公衆浴場最寄駅:東急池上線 蓮沼駅到達時間:徒歩約2分歴史:創業約80年リニューアル:2017年 12月訪問日時:2022/ 日曜:18時設備:⭕️サウナ ✖︎露天客層:若者〜中高年まで混雑度:13人くらいアピールポイント:大正浪漫をふんだんに味わえる内装🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽🗽蓮沼駅を降りて、踏切を渡る。🚦2分ほど歩くと ” はすぬま温泉 ” は見えてくる。😃煙突に ”はすぬま温泉” の文字。昔の煙突というよりは、カラフルな感じ。🌈入口には料金表が貼ってある。💸公衆浴場…

  • 2022/09/02 08:11
    🔥スーパーロウリュウサウナと玉袋調理人

    🌟銭湯で出会った人々🌟・玉袋調理人・外人教祖・七三先生・銭湯版パリコレ・👺🍙🍙🍙🍙🍙🍙基本情報💴💴💴💴💴💴名称:ニューウイング種別:スパ & サウナ & カプセルホテル最寄駅:JR総武線 錦糸町駅到達時間:徒歩約5分歴史:?リニューアル:特に無し訪問日時:2022/ 土曜:18時設備:⭕️サウナ ✖︎露天客層:若者〜中年(若者が多めの印象)混雑度:15人くらいアピールポイント:・2種類のサウナ(低温・高温)・セルフで行えるロウリュウ・小型プールのように広い水風呂(15度)👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺👺総武線JR 錦糸町駅南口を降りる。目の前には ” ◯I◯I ” (マルイ) が見える。👀むかし…

  • 2022/09/02 08:11
    ♨️大日本帝国銭湯と松岡修造

    🌟銭湯で出会った人々🌟・銭湯十ヶ条のおやじ・全身モンモン男・太った男・松岡修造👹👹👹👹👹👹基本情報🚰🚰🚰🚰🚰🚰名称:帝国湯種別:公衆浴場最寄駅:常磐線 三河島駅到達時間:徒歩約6分歴史:創業大正時代〜(2022年現在 105年目)リニューアル:なし訪問日時:2022/ 金:18時設備:✖︎サウナ ✖︎露天客層:中高年混雑度:8人くらい備考:20時閉店。アピールポイント:・歴史を感じさせる、激渋の雰囲気・熱々のお湯・今では絶滅に近い、番台での受付。・外に設置された小さな庭園🔥🔥🔥🔥🔥🔥🔥🔥🍊🍊🍊🍊🍊🍊🍊常磐線三河島駅を降りる。🚃目の前にはスーパーがある。子供連れのお母さんもちらほらいて、閑静な住…

  • 2022/09/02 08:10
    🔥灼熱 漢のサウナと変態カメラ

    🌟銭湯で出会った人々🌟・タンクトップ男・パイレーツ男・たまに玉触る男・変態カメラ🦍🦍🦍🦍🦍🦍基本情報🦲🦲🦲🦲🦲🦲名称:サウナ錦糸町種別:カプセルホテル サウナ最寄駅:総武線錦糸町駅到達時間:徒歩約5分歴史:昭和27年〜訪問日時:2022/ 土曜:19時設備:⭕️サウナ ⭕️外気浴客層:若者〜中高年混雑度:10人くらいアピールポイント:・120度の灼熱サウナ・長く大きな水風呂・トレーニング室🎥🎥🎥🎥🎥🎥🎥🎥📹📹📹📹📹📹📹JR錦糸町駅で降りる。改札口へ向かうと、前からタンクトップに短パンのオジさんが歩いて来る。現在真冬の2月・・・・。🙈はにかんだような笑みを浮かべながら、ホームのほうへ歩いていった…

  • 2022/06/14 17:18
    短篇小説「二次会の二次会」

    今夜も我ら「二次会」は大いに盛り上がった。「二次会」といっても正確にはまだ「二次会」の一次会で、これから我々はいよいよ「二次会」の二次会へと向かうところだ。 我々が言うところの「二次会」というのは二次的、つまり各所で副次的な役割を果たす人間の集まりで、副部長、副店長、副支配人、副キャプテンなど、その肩書きに「副」の字がつく人々が一堂に会するサークルである。それぞれが副次的な役割に甘んじているがゆえに、そこは自然と愚痴の温床になる。ゆえにサークルというよりは、いっそ秘密結社と言ってみたくなる気分もある。上司(=副次的でなく主たる役割の人々、たとえば部長や店長)への愚痴が違いを惹きつけあうように、…

  • 2022/06/09 14:40
    自作短篇小説「窓のない観覧車」をマインドマップ化する試み(本末転倒)

    小説を書く手段として、いわゆる「マインドマップ」というものを使ってみようと思った。いま流行っているのか、それともだいぶ前から流行っているのかもしれないが、以前お笑い芸人のかが屋がネタ作りの際に使っていると聴いて、なんとなく気になってはいた。あの言葉が枝分かれしていく、チャートみたいなやつである。とはいっても、いきなり何をどうやっていいのかわからない。ということで、まずは自分が先日ここに書いた短篇小説「窓のない観覧車」を、マインドマップ化してみてはどうかと考えた。通常とは逆の手順になるが、手はじめには素材があるほうがやりやすい。tmykinoue.hatenablog.comソフトはとりあえず、…

  • 2022/05/26 17:41
    短篇小説「窓のない観覧車」

    窓のない観覧車に、髭のない少年が乗っていた。窓のない観覧車は不粋だが、髭のない少年は不粋とは言えないだろう。少年にこの先、髭が生えてくるかどうかはわからない。 もちろん高所からの絶景など、望むべくもない。だがどれだけ待っても観覧車に窓がつかないのは、まず間違いのないところだった。足し算から掛け算の時代を経て、いまや何ごとにつけ引き算の求められている世の中だ。そんなご時世、なにかしらオプションが増えるというのはあり得ない選択肢というほかない。 それは観覧車というよりは、荷物を載せて運ぶコンテナというほうがふさわしかった。それに乗って観覧できるものといえば、ただ錆の浮いたコンテナの無愛想な内壁だけ…

  • 2022/05/21 17:32
    短篇小説「帰ってきた失礼くん」

    「失礼しま~す!」 今日も失礼くんが、元気よく知らない店に入りこんでゆく。本日の訪問先はパン屋だ。しかし失礼くんは特にパンを食べたいわけでも、誰かにおつかいを頼まれているわけでもない。ただ純粋に、失礼したい一心でそう言っているのだ。「ほら僕って、朝はごはん派じゃないですかぁ」 入口付近にあるトレイとトングを手にした失礼くんは、トングを無理やり箸のように握ってそう言った。店内には他に客も店員もいるが、特に誰に向けて言っているわけでもない。みな知らんぷりを決め込んでいる。もちろん彼にわざわざ朝食の好みを訊いた者など、誰もいなかった。「だけど最初にこのトレイとトングを手に持ってしまったからには、もう…

  • 2022/05/19 17:54
    最近聴読目録

    最近聴いたり読んだりした/している作品についての所感。 【音楽】 ◆『MY FATHER'S SON』/JANI LIIMATAINEN マイ・ファーザーズ・サンアーティスト:ヤニ・リマタイネンマーキー・インコーポレイティドビクターAmazon 元SONATA ARCTICAのギタリストのソロ作。もちろんそれ的な北欧メタル曲もあるが、思いのほか幅広いメロディ・センスを感じさせる楽曲群。豪華なゲスト・ヴォーカル陣の中でも、とにかく③「What Do You Want」⑥「The Music Box」におけるレナン・ゾンタ(ELECTRIC MOB)の歌唱が素晴らしい。その節回しは十二分に粘っこい…

  • 2022/05/05 10:40
    ♨️天然地下水銭湯と竹原慎二

    🌟銭湯で出会った人々🌟・竹原慎二・亀田パパ・鶴の恩返し🏀🏀🏀🏀🏀🏀基本情報🎩🎩🎩🎩🎩🎩名称:湯パーク 南柏種別:公衆浴場最寄駅:JR常磐線 南柏駅到達時間:西口より徒歩3分歴史:1995年創業(柏市で現存する、唯一の銭湯)訪問日時:2022/ 土:19時設備:⭕️サウナ ⭕️半露天風呂客層:中高年が多め混雑度:15人くらい (ピーク時は20人)備考:駐車場あり。(12台ほど)アピールポイント:・地下150mの地下水を使用・2種類のサウナ(ミストと遠赤外線)🚗🚘 🚗🚘 🚗🚘 🚗🚘 🚗🚘 🚗🚘 🚗🚘 JR常磐線 南柏駅を降りる。🚃目の前には、タクシー乗り場のロータリーが広がる。ロータリーを横切り、…

  • ブログみる【ブログみる】ブログを完全無料で検索・閲覧できるアプリみつけた! - 中年独身男のお役立ち情報局
  • 2022/05/05 10:39
    ♨️疲労回復銭湯とking of メガネ

    🌟銭湯で出会った人々🌟・金太郎・king of メガネ🎉🎉🎉🎉🎉🎉基本情報🍎🍎🍎🍎🍌🍌名称:柳湯種別:公衆浴場最寄駅:JR総武線 本八幡駅到達時間:南口より徒歩10分歴史:昭和39年創業(東京五輪直前)訪問日時:2022/ 日:20時設備:⭕️サウナ ✖︎露天風呂客層:中高年混雑度:15人くらい (ピーク時は20人)アピールポイント:・内装が男女で日替わり(長寿の湯・元気の湯)・斬新なイベント風呂👓👓👓👓👓👓👓👓👓👓👓👓👓👓👓JR総武線本八幡駅を下車。南口を出て、10分ほど歩く。🚶‍♂️柳湯到着‼︎正面には ” 疲労回復銭湯 ” と書かれている。😇下駄箱に靴を入れ、中に入る。フロントにはおばさ…

  • 2022/05/05 10:39
    ♨️もんじゃ銭湯とフルチンのターミネーター

    🌟銭湯で出会った人々🌟・ハッピ男・フルチンのターミネーター・宮崎駿🔥🔥🔥🔥🔥🔥基本情報🤖🤖🤖🤖🤖🤖名称:月島温泉 湯パーク月島種別:公衆浴場最寄駅:東京メトロ有楽町線 月島駅到達時間:10番出口より徒歩4分歴史:明治33年創業(月島の埋め立て開始と同時期)訪問日時:2022/ 土:19時設備:⭕️サウナ ✖︎露天風呂客層:ほぼ高齢者混雑度:10人くらいアピールポイント:・歴史を感じさせる、提灯つきの入口🏮・もんじゃ焼き店が立ち並ぶ、”もんじゃ通り”の一画にある。🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷🐷東京メトロ有楽町線 月島駅を下車。🚉もんじゃ焼きで有名な月島。本日向かうのは、その付近の銭湯だ。♨️銭湯…

  • 2022/05/05 10:39
    💮仏像

    日本は古来より、仏教を信仰している。日本人の教育、また心の支えとして多大な機能を果たしてきたのである。その象徴とも言えるのが、仏像である。仏像はほとけの心を表しており、言ってみれば日本人の守神とも言えるかもしれない。では実際、どのような仏像が存在するのであろうか。以下にご紹介したいと思う。1. 観音像別名、観世音菩薩または観自在菩薩とも言う。一般的には観音様と呼ばれている。日本では飛鳥時代から造像例があり、現世利益と結び付けられる。時代・地域を問わず広く信仰されている。 2. 如来像「はかりしれない光を持つもの」「はかりしれない寿命を持つもの」上記の意味合いから、別名を無量光仏・無量寿仏とも言…

  • 2021/12/13 18:16
    短篇小説「感謝しかない」

    今朝はあやうく寝坊するところだったが、スマホのアラームがちゃんと鳴ってくれたお蔭で予定どおり起きることができた。スマホには感謝しかない。 それ以前にベッドがあるお蔭で、僕は寝坊するほどに眠ることができている。ベッドにも感謝しかない。 もちろん寝るために必要なのはベッドだけじゃなかった。枕にも布団にも感謝しかない。シーツはもうところどころ破れかけてはいるけれど、破れないように頑張ってくれているのがわかるから、結局のところ感謝しかない。 羽毛布団からは頻繁に羽が飛び出してくるが感謝しかない。おかげで当初のふわふわ感はどこへやら、すっかりせんべい布団になってはいるが、それが布団である以上は感謝しかな…

  • 2021/12/03 19:08
    短篇小説「ワンオペ村」

    同期一の出世頭と目されていた業田作一郎が、ある日仕事で重大なミスを犯した。彼はその責任を負わされて、このたび離島のワンオペ村へ飛ばされることになった。ワンオペ村はその名のとおり、何から何までワンオペでおこなわれると評判の村である。彼は転勤前から、その噂に戦々恐々としていた。何から何までというのが、どこからどこまでなのかがさっぱりわからなかったからだ。 転勤先のワンオペ村支店に出社する当日の朝から、作一郎はさっそくワンオペの洗礼を受けることになった。この村では、まず新居である自宅マンションの部屋を出る際に、玄関ドアを閉める動作と施錠を、なんと分業ではなくワンオペでおこなわなければならない仕様にな…

  • #ネオナチ
  • 2021/11/24 18:12
    短篇小説「ガチ勢とその後続」

    あるコンサート会場の入場口に、開演前の行列ができていた。その先頭に並んでいる第一の集団は、もちろんガチ勢であった。 ガチ勢のうしろには、マジ勢が陣取っていた。ガチ勢とマジ勢は、どちらがよりガチのファンで、どちらがよりマジのファンかで言い争っていた。結果、ガチ勢のほうがよりガチで、マジ勢のほうがよりマジであるということに決した。なんの意味もない議論であった。 マジ勢の後方には、スキ勢が続いた。スキ勢はこの日コンサートをおこなうアーティストのことを間違いなく好きであったが、好きになれる部分しか見ていない人たちだった。ガチ勢とマジ勢は、そこがどうにも許せない。本当に対象のことを好きであるならば、嫌い…

  • 2021/11/16 19:00
    短篇小説「話半分の男」

    私と話半分の男の出会いは奇妙なものだった。ある日私が近所を散歩していると、蓋のない側溝に気をつけの姿勢で、仰向けに寝そべっている男が目に入った。その中年男性は、冬なのに半袖半ズボンを着用していた。私はなるべく目を合わせないように、その脇を通り過ぎようとした。だが見て見ぬふりを貫くというのは、思いのほか難しいものだ。「いやマラソン大会の途中で、小川に流されてしまってね」 男が唐突に、訊かれてもいない自らの事情を説明しはじめたのだった。周辺を歩く人はほかに見あたらず、男が私に話しかけているのは明白だった。私は無視して通過しようかとも思ったが、自らの手を汚さない範囲で、なんらかの助けを呼んでやるくら…

  • 2021/11/05 19:32
    「新語・流行語全部入り小説2021」

    ある雨上がりの朝、古びたカエルのマスコットキャラクターが、SDGs(粗大ごみのsサイズ)のステッカーを貼られてごみ置き場に捨てられていた。それは昨日まで近所の薬局の店頭に立っていたものだった。粗大なのにsとは、大きいのか小さいのかわからない。 学校へと向かう人流の中からその姿を見つけた中学生のウマ娘は、ふとごみ置き場の前に立ち止まり、自らの圧倒的なカエル愛に初めて気がついたのであった。 ウマ娘は、自分をウマ娘として誕生させた親ガチャに失望していた。彼女は自分が本当は鮮やかな緑色のカエル娘になりたかったことを、いまさらながら発見してしまったのである。極度にカラフルな服装を好むZ(ZAZY)世代な…

  • 2021/09/27 19:13
    短篇小説「匂わせの街」

    冒険の途中でふと喉の渇きをおぼえたわたしは、夕暮れどきに立ち寄った街でカフェのドアを開けた。「いらっしゃい! そういえば最近、夜中になると二階から妙な物音がするんだよ」 カウンターでカップを拭っている髭のマスターが、ありがちな挨拶に続けてなにやら唐突な相談を持ちかけてきた。さすがに気になったので、初対面ではあるが、わたしはボタンを押してもう一度話しかけてみた。すると、「いらっしゃい! そういえば最近、夜中になると二階から妙な物音がするんだよ」 マスターは、先ほどと一言一句同じ台詞を繰り返すのだった。わたしはひどく馬鹿にされているような気がしたが、ふと喉の渇きを思い出して、ここは飲み物にありつく…

  • 2021/09/08 23:53
    145字小説「駆け出しのAI」

    私の自動車にはAIが搭載されている。私はその実力を試すように、崖の手前に差しかかったところでAIへ指示を出す。「アホクサ、ブレーキかけて」 「はい、かしこまり」 すると自動車のブレーキが、脱兎のごとく駆け出した。私は奈落の底へと沈みゆくマイカーの中で、この文章を書いている。 アホクサに漢字は難しい。

  • 2021/08/12 16:54
    電子書籍『悪戯短篇小説集 耳毛に憧れたって駄目』無料配布キャンペーンのお知らせ2021…夏

    なんとなくの思いつきで、久々に拙著電子書籍の無料配布キャンペーンを開催することにしました。シェフの気まぐれサラダと同程度の気まぐれで。見出しの最後にちょっとだけJ-WALK感。(気づいたところで何?)どれくらい気まぐれかというと、こうして久々とか言いながら、実は一年ちょっと前にもやっていたという。自分の書いたお知らせが、自分に一番届いていなかった可能性。tmykinoue.hatenablog.comしかも改めて読んでみるとかなりの情報量を書いていて、まあ当然のように余計なこともいっぱい書いてあるわけですが、と書いているこの一行こそが余計なことであるわけですが、電子書籍の中身に変わりはないので…

  • 2021/07/30 19:27
    短篇小説「オール回転寿司」

    私は先日、いま話題の「オール回転寿司」へ行った。まさかあんなに回るとは。回る回るとは聞いていた。しかしその回転の度合いは、私の想像をはるかに超越したものであった。こんな店が繁盛しているということは、人間はとにかく回ることを愛する生き物であるということだろう。さすが、回転する星の上で生活することを選んだだけのことはある。どうりで竜巻のようなジェットコースターに長蛇の列ができるわけだ。夕飯時を迎えた「オール回転寿司」の店頭にも行列ができていた。入口の脇で理髪店前に立つべき三色縞のサインポールが回っているのは、それによって列に並ぶ客の回転スピードをコントロールしているからだ。「行列の回転」といっても…

  • 2021/07/03 15:53
    短篇小説「兄不足」

    太郎は次郎に知っていることを話した。知っているというのは太郎が知っているという意味で次郎は知らない話だ。太郎だっていまこそ知っているが昨日までは知らなかった話だ。次郎にしてもいまこそは知らないが数分後には知ることになる。あとちょっとすれば晴れてお揃いになるというわけだ。 太郎と次郎は兄弟ではない。次郎は太郎のことを兄のように慕っているが、太郎は次郎のことを弟のように可愛がっているわけではない。太郎も次郎のことをまた兄のように慕っているのだ。 こうなってくると、どちらが歳上かなんてのは些細な問題だ。人が相手を兄と慕う心以上に、その相手が兄であるという事実はない。実際のところ、二人とも相手のほうが…

  • 2021/05/28 18:02
    短篇小説「店滅」

    床に絨毯にアスファルトに頭をこすりつけて謝るだけの仕事を終えた夜、そのまま帰宅しても眠れない予感がした私は、気づけば路地裏に迷い込んでいた。あるいは自ら迷いたくて迷っていたのかもしれない。真っすぐ家に帰りたくないがためにまわり道をすることなら、そういえば子供時代にもよくあった。変わらないことを喜ぶべきか、成長しないことを哀しむべきか。 すでに夜の十時を過ぎていただろうか。路地の両脇に立つ店の看板はどれも真っ暗で、営業時間を過ぎて閉店しているのかとっくに潰れているのかもわからない。 だがその突き当たりにただひとつ、ちかちかと点滅している正方形の電飾看板が立っていた。点いたり消えたりのリズムが不定…

  • 2021/04/15 18:21
    短篇小説「おやつんクエスト」

    都会の喧噪を離れたリゾート地たけのこの里に、ルヴァンという名の王子がいた。ルヴァンはことあるごとにパーティーを催すことでお馴染みのリッツ家の跡取り息子で、顔にあばたが多くその皮膚はところどころ塩を吹いている。 かつて隆盛を極めたリッツ家も、ルヴァンの代になるとすっかり勢いを失っていたが、そんなときに限って危機は訪れるものだ。 先ごろ、海の向こうの無人島に聳え立つきのこの山に暗黒の帝王ダースが降臨し、部下の暴君ハバネロとともに、まもなくこのたけのこの里へ攻め込んでくるらしい――そんな剣呑な噂が、里の耳聡いカントリーマアムたちのあいだでまことしやかに囁かれていた。 そんなある日、リッツ家の分家であ…

  • 2021/04/13 14:23
    短篇小説「ネタバレ警察」

    新部署に配属されたばかりの越智裕三が、スーパーのおやつ売り場でお菓子のパッケージをひとつひとつ手に取りながらひとりごとを言っている。「『ポッキー』か……これはやっぱり、食べたとき鳴る音からそう名づけられたんだろうな……だとすれば確実にアウト、と。えーっと『ポテトチップス』は……ポテトのチップス……って以外に理由はないだろうから、これもアウト。ああ、『じゃがりこ』ね。もちろん原料がじゃがいもだからなんだろうけど、後半の『りこ』の部分は見えてこないから……まあ審議対象か。といっても25%ラインは遥かに超えてしまっているから、駄目なことは駄目なんだけどな――」 裕三はお菓子を手に取っては棚に戻しなが…

  • 2021/04/06 22:11
    短篇小説「反語の竜」

    竜は素直じゃない男だ。彼は産道の中ですらも、「産むなよ、産むなよ」と心の中で念じていたという。もちろん産まれたくないわけではなかった。だが本当に産まれたかったのかどうかは、物心ついていないのでよくわからない。 竜の少年時代には苦い思い出が多い。ある日、昼休みのドッヂボールに夢中になりすぎた小学五年生の竜とクラスメイトたちは、遅れて教室へ突入すると廊下に並ばされ、担任の男性教師に説教を喰らうはめになった。しかしこの担任は温厚な青年で、このときも恫喝するような調子は微塵もなかった。 だが人間、何でスイッチが入るかわからない。そんな気配など微塵もない担任の説諭の最中に、竜が突如として「ぶつなよ、ぶつ…

  • 2021/01/22 19:11
    短篇小説「言霊無双」

    目の前を歩いている人がずっと後ろを向いているように見えるのは、シンプルに彼女が後ろ向きな考えを持っているからだ。人は後ろ向きな思考を続けているあいだは、文字通り顔面が後ろを向いてしまうようになった。 それに対して、先ほどから僕の右脇を歩いている男をどんなにジロジロ見つめてもこちらを振り向かないのは、おそらくは借金で首が回らないせいだろう。 ネットやSNSの流行により、言葉によって人が傷つき時には命を失うほどまでに言葉の力が増大した。その結果、言葉は人の身体を容赦なくコントロールするようになった。それは古来「言霊」と呼ばれる言葉の霊力がかつてなく強まった結果だ。 後ろ向き女と首回らな男、この二人…

  • 2021/01/20 20:33
    短篇小説「言わずもが名」

    かつてはこの国にも省略の美学というものがあった。 たとえば俳句。に限らず会話や文章、そして商品のネーミングに至るまで、語られていない行間にこそ価値がある。そこに粋を感じる悠長な時代がたしかにあったのだ。いやあったらしい。私はそんな時代は知らない。物心ついたときからすでに、省略は不誠実と見なされ罰せられる、何もかもが説明過多な時代がすっかり完成していたのだから。 もちろん説明過多というのは過去と比較しての話だ。この時代に生きる私たちはそれを説明過多と感じることはない。なぜならば目にするものも会話も文章も、すべてが常時説明過多であるからだ。 つまりそれはデフォルトであり標準仕様であって多いも少ない…

  • 2021/01/18 17:59
    短篇小説「漕ぎ男」

    男が自転車を立ち漕ぎしている。 文字通り、サドルの上に立って。ペダルまでの距離は遠いが、いまは下り坂なので問題はない。上り坂が来ないことを祈るばかりだ。 やがてサドルの上に立って進む立ち漕ぎ男の脇を、座り漕ぎ男が追い抜いてゆく。座り漕ぎ男もまた文字通り、地面に座ったまま自転車を漕いでいる。もちろん尻は熱い。 と思いきや、ボトムスの尻部分には二個のローラーがついているので熱くない。なので正確に言えば二輪車ではなく四輪車と言うべきだ。尻ローラーがうなりを上げる。 そうなると次に現れるのはもちろん寝漕ぎ男だ。寝漕ぎ男は前輪と後輪のあいだに、あお向けに寝そべってペダルを漕いでいる。なので寝漕ぎ用自転車…

  • 2021/01/16 19:42
    短篇小説「何もない」

    とある土曜日の夜、私は「題名のない音楽会」へ行った。 それは「指揮棒のない指揮者」が指揮をとり、「バイオリンのないバイオリン奏者」や「チェロのないチェロ奏者」が「音楽のない音楽」を演奏する素晴らしい音楽会。ないのは題名だけでなく、あるのはただ静寂のみであった。 出不精の私をこの素敵な会へと出向かせたのは、「友達のいない友達」からの「誘い文句のない招待状」である。 では「友達のいない友達」にとっての私はいったいどういった存在であるのか。むろん彼には友達がいないはずなので、私とてご多分に漏れず友達ではないと思うのだが、その手紙は間違いなく私宛に送られてきたものだ。 招待状には、当然のように私を招待…

  • 2021/01/14 19:00
    短篇小説「キュウリを汚さないで」

    工場の真ん中にテーブルがある。テーブルの端で男Aがキュウリに泥を塗っている。 その隣の男Bがたっぷり泥のついたキュウリを受け取ると、シンクへと走りそれを丁寧に洗う。男Bはそのキュウリを、シンク脇に引っかけてある泥まみれの布巾で拭く。キュウリは再びドロドロになるが、このドロドロは男Aがもたらしたドロドロとは何かが違う。何が違うのかは誰にもわからない。 ドロドロのキュウリを預かりに男Cがやってくる。男Cは男Aのいたテーブルに向かい、そこでやはりたっぷり泥を塗ってから、ドライヤーでカラカラに乾かしてゆく。最初は熱風、仕上げは冷風。乾ききった泥キュウリは、すっかり違う表情を見せる。 そこへ下駄を鳴らし…

  • 2021/01/09 12:24
    短篇小説「不可視な無価値」

    右に置いてある物をそのまま右に置いておくのと、いったん左に動かしてから再び右に置き直すのとではまったく意味が異なる。それが我が社の理念である。 これは一度動かしてしまうと同じ右でも位置が微妙に変わってしまうとか、そういうことではない。当初置いてあった場所と、動かした末に戻した場所が寸分違わぬ場所であったとしても、それらはすでに完全な別物なのである。我が社はそういう方針のもとで生産活動をおこなっている。 ゆえに我が社では転勤が異常に多い。東京本社に勤めている者が、ある日突然大阪への転勤を言い渡され、翌日にはさっそく大阪支社へと出社する。そしてその次の日には、再び東京本社の、いつもの席へと出社する…

  • 2021/01/08 13:10
    コント「無傷だらけのヒーロー」

    【登場人物】 ガジロー選手(野球のユニフォームを着ている) アナウンサー 試合後のヒーローインタビュー。お立ち台に選手が立ち、その横でアナウンサーがマイクを向ける。深めのエコーがスタジアム全体に響き渡る。アナウンサー「放送席~放送席~。本日の試合で見事完封勝利をおさめました、スワルトヤクローズのガジロー投手です。(ガジローに)いやー、それにしても完璧な復帰戦でしたね!」 ガジロー 「ありがとうございます! 復帰っていうか、ずっと出てましたけどね」 アナウンサー「気づきませんでした! しかし一年半ぶりの登板ということで、だいぶ緊張したんじゃないですか?」 ガジロー 「いや、だからずっと中五日でコ…

  • 2021/01/06 15:06
    短篇小説「動機喚起装置もちべえ」

    私はついに動機喚起装置『もちべえ』を手に入れた。これさえあればどんな願いも叶えたようなものだ。なにしろ成功する人間にもっとも必要とされるものは、実のところ斬新な発想でも強固な人脈でも漲る行動力でもなく、それらすべての原動力であるところの「動機」であるからだ。 物事のスタート地点には、必ず動機というものが存在する。動機なきところに成功などあり得ない。明確な動機なしにはじまったプロジェクトは、内容を問わず途中で推進力を失い必ず頓挫することになっている。動機なき言動に人を動かす力など微塵もないからである。 人がことをはじめる際にもっとも持ちあわせていなければならないが、自らの意志ではけっしてつくりだ…

  • 2020/12/31 16:59
    短篇小説「坂道の果て」

    大学受験当日の朝、満員電車から予定通りスムーズに脱出した嶋次郎は、受験会場である志望校へと続く坂道を歩いていた。右へ左へうねりながら延々と続くその登り坂は、まるでこの一年間の道のりのようだなと思いながら。 だが嶋次郎がこの道を辿るのは初めてではない。それは彼が浪人しているという意味ではなく、彼は何度もこの道を実際に通ったことがあるということだ。 嶋次郎は予行演習と称して、受験前に何度も志望校への道をその足で確認していた。もちろん当日と同じ時間帯の同じ電車に乗り、同じ道のりを歩いて。それが勉強をサボるちょうどいい理由になっていたことも否めないが、そこは「息抜き」と心の中で都合よく言い換えてみたり…

  • 2020/12/29 17:52
    短篇小説「土下男」

    土下男はすぐに土下座ばかりするから土下男と呼ばれている。名前はまだない。なんてことはないが誰も彼を本名で呼んだりはしない。彼が死んだら、間違いなくその戒名には土下男の三文字が含まれるだろう。だが土の下に埋められるにはまだ早いと言っておく。 土下男は学生時代から土下座ばかりしていた。宿題を忘れても遅刻をしても買い食いをしても土下座一発で許された。 しかし人はどんな奇抜な動きにも見慣れるものだ。飽きられるにつれて、その効力は着実に弱まっていくことになっている。ならばこちらも強度を上げねばならない。そのためにはどうしたら良いか。土下男はまず、地面に頭をつけている時間を増やすことを考えた。 不祥事を起…

  • 2020/11/28 19:20
    ジョージOL

    じゃなくてジョージ・オーウェルを最近ようやく読みはじめた。このタイトルから、OLの格好をした高橋ジョージを期待してしまった人には本当に申し訳ない。著者近影を見る限り、髪型は少し似ているかもしれないが。なぜ今ジョージを読もうと思ったかといえば、近ごろになって自分の書いている小説が、どれもこれも実のところ、ある種のディストピア小説と言えるのではないかと急に感じはじめたからだ。それでディストピア小説を調べてみると、どこへ行っても必ずやジョージの『一九八四』に当たる当たる。ディストピア小説というくくりで紹介する際に、『一九八四』を入れていなければモグリだと言わんばかりに。もともとディストピア的な小説は…

  • 2020/11/25 16:51
    馬鹿擬音小説「ギュンギュンのウ~ン」

    擬太郎がバーンと開けてガチャッと回しザッザッザッと降りると、空はスカッではなくドンヨリとしてシトシトと降っていた。ザーザーというほどではないしもちろんザンザンにはほど遠い。 マンションのエントランスをパカーンと出た擬太郎は、トントンしていた長いものをミチミチ言わせながらバサッと広げた。その骨が一本バキッとなりクネッとなっていることに一瞬ハッとなるが、プイッと見なかったことにしてスーンと気にせずに差してトコトコと歩きはじめた。 ウ~ンと考えごとをしながら歩いていると、後方でチリンチリンと音が鳴り、擬太郎はサッと道の端へよけた。するとシャーッとその脇をすり抜けるものがあり、さらにその後ろからブッブ…

  • 2020/11/13 01:06
    ショートすぎるショートショート「立ち漕ぎ男」

    男が自転車を立ち漕ぎしている。 文字通り、サドルの上に立って。 www.youtube.com

  • 2020/11/06 18:45
    「新語・流行語全部入り小説2020」

    コロナ禍ですっかりテレワーク慣れしたアマビエが、いっちょまえにZoom映えを意識してアベノマスクに香水を振りかけた。マスクに香水を振りかけたところで、においはどんな電波でも伝わらないのだから、アマビエが画面越しに映えることは一切なかった。 本来ならば新しい生活様式だニューノーマルだと言い張って、ついでにGoToキャンペーンにもちゃっかり便乗して、ソロキャンプでもしつつワーケーションと行きたいところではある。しかし同僚のアマビエがPCR検査で引っかかり、事務所がクラスター認定されたいまとなっては、その濃厚接触者である彼女に長距離移動の自由はなかった。 疫病退散を謳う妖怪であるアマビエが疫病にかか…

  • 2020/11/05 18:21
    短篇小説「あれ」

    ある朝のことである。家を出て駅へと向かう道すがら、私は「あれ」を家に忘れてきたことに気づいた。私はいますぐに「あれ」を取りに帰るべきだろうか。だが「あれ」がなくても、今日一日くらいなんとかなるだろう。そう思って私は踵を返すことなく、いつもの通勤電車に飛び乗った。 だがその考えは、あまりに楽観的すぎたかもしれない。私は揺れる満員電車の中でつり革を掴んだり放したりしながら、「あれ」を忘れたことでこの先私に何が起こり得るかを考えた。もはや取りに戻る時間の余裕はない。 このまま会社へ着いたところで、「あれ」がなければ私は自社ビルに入館することすらできないだろう。入口に立つ厳格な警備員が、「あれ」を忘れ…

  • 2020/11/04 15:57
    短篇小説「違いがわかる男」

    判田別彦は違いがわかる男だ。彼に違いがわからないものはない。いや、わからない違いはないと言うべきか。もちろん「レタス」と「キャベツ」の違いだってわかる。 いい感じなほうが「レタス」で、そうでもないほうが「キャベツ」だ。 別彦にかかれば、「牛肉」と「豚肉」の違いだってお手のものだ。高いとか安いとか、美味いとか不味いとかの問題じゃない。 既読スルーしそうなほうが「牛肉」で、しなさそうなほうが「豚肉」だ。これはとてもわかりやすい判別方法なので、ぜひ憶えておくといい。「牛肉」は返信をわざと遅らせてきたりもする。ちなみに「鶏肉」は電話派だ。「ハイネック」と「タートルネック」の違いは、ちょっと難しい。しか…

  • 2020/10/31 15:20
    書評『穴』/小山田浩子

    穴 (新潮文庫)作者:浩子, 小山田発売日: 2016/07/28メディア: 文庫「穴」というモチーフには、なぜだか常にワクワク感がある。だからカフカも安部公房も村上春樹も穴を使う。ということはつまりカフカが使ったからか。影響関係を考えると。その題材の強さのおかげで面白さの最低ラインが保証されると考えるか、逆にハードルが上がると考えるかは読み手次第だが。芥川賞受賞作。物語は田舎に越してきた主婦の日常からはじまる。これが本当に日常なのだ。日常というのは当然のごとくリアルだが、そのぶん退屈も伴う。丁寧に描き出される日常の連続に、個人的には挫折しそうになった。しかし日常というのは、現実とフィクション…

  • 2020/09/30 15:25
    短篇小説「品書きのエモい料理店」

    誰もがグルメグルメとほざく昨今、私はいよいよ通常の美味いだけの料理では飽き足らなくなってしまった。料理とは、ただ物理的に美味いだけで良いのだろうか。演奏の上手いだけの音楽が味気ないように、美味いだけの料理というのもまた、文字どおり味気ないものだ。 私は心を揺さぶるエモーショナルな音楽が好きだ。ならば同じく感情に訴えかける、エモい料理というものがどこかにあるのではないか。そんな疑問を持ちはじめた矢先のことだった。近所に新しい料理店がオープンするというチラシが、ポストに投げ込まれていたのは。 私はオープン初日の開店時間に合わせて、その店を訪れた。なぜならばそのチラシには、「あなたの心に、届けたい料…

  • 2020/08/11 20:34
    短篇小説「耳毛をちぎらないで」

    真夜中の路地裏。濡れた壁面に押しつけられ、片耳細コードイヤホンの北村が、大型ふかふかヘッドホンの西沢に左手で胸ぐらを掴まれている。大型ふかふかヘッドホンの西沢は、片耳細コードイヤホンの北村の胸元で自分を挑発するように揺れ動くコードを、右手で強く握り込んで一気に引きちぎった。 北村の片耳細コードイヤホンは、モノラル仕様の片耳分しかない一本の線であった。しかもその末端にあるイヤホンジャックはどこにもつながっていないから、ただ片耳からぶら下がっているだけの不安定なコードを引きちぎるのは思いのほか難しい。だが自らの手首をくるっと回転させ、イヤホンコードを巻き取りつつ巧みに引きちぎる大型ふかふかヘッドホ…

  • 2020/08/06 18:39
    短篇小説「バベルの誤塔」

    十年かけて、ついに私は金字塔を打ち立てた。いや実際には金字塔ではなく、隣の塔にそっくりな近似塔なのであった。 高さもデザインも内装もまったくそっくりな違法建築である。そもそも隣の塔が違法建築なのだから、それを真似したらそうなってしまうのは仕方ない。いや違法建築ではなく異邦建築だったかな。そういえば現場で見かけた作業員の多くは、外国人労働者であったような気がしないでもない。 私は今日はじめて、できたてほやほやの我が塔の最上階へ昇ってみた。その際もちろん階段ではなくエレベーターで昇ったわけだが、ちょっと表面がぬるぬるしていたので、私が乗ったのはエレベーターではなくアリゲーターだったのかもしれない。…

  • 2020/07/28 18:48
    短篇小説「AでもないBでもない」

    背が高くも低くもない、特に男っぽいわけでも女っぽいわけでもない男が、お昼すぎとも夕食前とも言えない時間帯に、定食屋にもレストランにも見えない飲食店で、昼定食でもランチでもない何かを食べていた。男のほかに客はいなかった。 男が店に入ってきた瞬間、店主でも店員でもない女は、この男のことが妙に気になった。男の姿が、サラリーマンにも工場労働者にも水商売にも無職にも見えなかったからだ。 この店はオフィス街でも歓楽街でも学生街でも田舎町でもない場所に建っていた。特に美味いわけでも不味いわけでもないが、かといって普通というほど普通でもなく、特別というほど特別でもないところが落ち着くと評判の店だった。なんて面…

  • 2020/07/23 13:58
    短篇小説「逆接族」

    つい先日、関東地方にいわゆる「火球」が落下したのは記憶に新しい。だがそれはもちろん、一般市民の混乱を防ぐために画策された、為政者サイドによる隠蔽工作に過ぎない。実際には皆さんご期待のとおり、そのとき未確認飛行物体が地球上に着陸したのである。 落下直後、現場へ私のような言語学者が呼び出されたのが何よりの証拠だろう。つまり未確認飛行物体には言語を操る何者かが搭乗していること、そしてその相手が地球とは異なる言語圏に住む者であるということが、あらかじめ予測されていたということになる。 真っ暗闇の中、あまりにも予想どおりに青白く光る円盤状の物体から登場したのは、人間とまったく見た目の変わらない、ひとりの…

  • 2020/07/17 17:31
    短篇小説「誰得師匠」

    今日も劇場の楽屋は誰得師匠のおかげでてんやわんやである。楽屋口から出たり入ったりしながら、トイレへ行った一瞬の隙に連れてきた鳩がいなくなったと誰得師匠が騒いでいる。担当の新人マネージャーを呼びつけては鳩の生態を語って聴かせ、劇場の女性スタッフを捕まえては鳩の餌代がいかに高くつくかを熱弁する。 三十分ほどスタッフ総出で探索させたのち、楽屋でのんびり煙草を吹かしている誰得師匠にマネージャーがおそるおそる声をかける。「すいません、まだ見つかってなくて……」 新人が怒鳴られるのを覚悟してほとんど目をつぶりながらそう言うと、誰得師匠は驚くべき返答をしれっと口にした。「ああ、鳩ならここにあったよ」 そして…

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